プレス
2017.09.15
「原価見積計算システム」 開発ベンダーにユカアンドアルファ
【プレス】加工賃適正化へ「原価見積計算システム」
アパレル工業新聞 – 2017年9月1日 掲載
=アパレル工連=
国内生産の縮小に歯止め 「原価無視」の習慣を脱却
日本アパレルソーイング工業組合連合会(アパレル工連、岩崎靖璋会長)は、加工賃適正化のための「縫製工場製造原価見積計算システム」(仮称)開発の取り組みを始めた。中小企業最低賃金引き上げ支援対策費補助金(業種別中小企業団体助成金)を受けて開発するもので、事業規模(助成額)は一千九百五十一万九千円。近く助成金交付が正式決定する見込み。縫製加工賃は二〇〇八年のリーマンショック以降上がっておらず、しかも加工賃は、習慣的に製造原価を無視した小売価格からの逆算比率または指し値で決められることが多い。今回、単純に加工賃値上げを要求するのではなく、工場側から標準的価格を提示し、適正な価格交渉に道を開くのがねらい。国産比率が三%を割った現在、国内生産の縮小に歯止めをかけるのは至上命題だ。
「縫製工場製造原価見積計算システム」(仮称、以下原価見積計算システム)の事業実施に当たってアパレル工連は、業界委員、専門家委員からなる管理委員会、ワーキング委員会を設置。八月九日に助成金の採択が内定したのを受けて八月二十五日、東京でキックオフミーティングを開催し、小委員会が発足。委員長には井上美明アーバン社長が就任した。開発ベンダーはユカアンドアルファが担当、来年二月の完成を目指す。
原価見積計算システムは、①標準見積システム②サンプル作成積算システム-で構成。標準見積システムは、縫製工場が取引アパレルから企画段階で引き合い、コスト問い合わせを受けた時点で基本的コストの提示を簡単・即答できることを可能とするのが目的。委員会で定義された基本アイテム、仕様、ディテールなどをメニュー選択し、実施された工程時間の集計が自動計算され、各種係数も選択、入力することでユーザーにとって適切な見積もりを作成できる。
サンプル作成積算システムは、あぱれるから受注前後に実行される現物サンプル作成の各工程分析と実行時間を入力し、最終工賃判断、最終見積作成や生産工程の調整・編成に繋げるサンプル作成工数積算ができる機能を開発。また、この実績データをクラウド化により組合員で共有し、標準見積システムの標準テーブルのデータ改編に繋げ、見積もり精度を更に向上させる。
工連傘下の企業は零細・小規模のところも多く、本来は工賃交渉の基礎になるべき工程分析などがなされていないのが実情。このため簡単に活用できることが求められる。また、地域差(地域別最賃)、ロット、素材難易度など一律にはきめられないという問題がある。このため、工程時間分析テーブルを簡単なものにし、地域差や素材難易度などについては係数を取り入れ、実際に使える現実的なシステムを目指すことにしている。